着床前スクリーニングのメリットとデメリットは?

体外受精で流産を繰り返す、または着床不全のある女性を対象に、
受精卵の染色体異常を調べる着床前スクリーニングの有効性を
臨床研究する計画案が了承されました。
従来の出生前の検査とどう違うのか、その課題について
考えてみたいと思います。


これまで受精卵の検査は「命の選別」につながるとして
重篤な遺伝性疾患が予想される場合などに限って
認められてきた経緯があります。
日本産科婦人科学会小委員会は検討を続けてきましたが、
流産予防を目的として、その有効性について
臨床研究していく計画をまとめました。
そして日産婦倫理委員会がこれを了承し、
最終的に理事会の判断を待つことになりました。
認められれば、実施は来年度にスタートする見込みです。
これまで、重い遺伝病がある場合、夫婦いずれかに染色体異常が
あるために流産を繰り返すケースを対象として
遺伝病や習慣性流産に関係する染色体異常がない受精卵を
子宮に戻すとして着床前診断が実施されてきました。
染色体に異常があっても生まれてくる可能性がある受精卵を
排除することになるのではないか?という批判がありました。
また、承認されてまだ日の浅い新型出生前検査は、
血液検査によって胎児の染色体異常を調べるもので、
妊娠継続中であっても人工妊娠中絶を選択することにつながる
という倫理的な問題が指摘されています。
今回の着床前スクリーニング(ふるい分け検査)は、
流産しやすい染色体異常がない受精卵を子宮に戻すための検査です。
従来の診断と違うところは検査対象の広がりです。
体外受精で3回以上着床しなかった、流産を2回以上経験した女性
ということですので、不妊治療中の多くの女性がその対象となります。
子どもに重い遺伝性疾患が出る可能性がある両親対象の診断と比べ、
一般的な不妊カップル全体に対象が広がるということです。
高齢などの理由で流産や着床不全を繰り返す多くの女性にとって
福音となる可能性があります。
新型出生前診断と比べると人工妊娠中絶につながりにくい
という点ではハードルが低くなりますが、依然として
受精卵を操作するという倫理的な課題があります。
また、すべての染色体を検査するために、
さまざまな病気や、男女の性別などもわかるため、
命の選別につながるとして警鐘を鳴らす意見もあります。
際限なく完璧さを求める怖さが指摘されているのです。
検査を受けて完璧を保証された安心して出産しても、
現時点ではまだ判明していない病気や問題も起こりうる可能性はあります。
生命科学はすべて明らかになっているわけではないのです。
100%でない結果をもとに命の選択をすることの危うさが残ります。
技術的な発展、進化は今後の課題であり続けるでしょう。
そうしたデメリットと、患者の肉体的・心理的・経済的負担の軽減
というメリットを天秤にかけて、十分に議論していただきたいです。

非常に難しい判断になるかと思います。
安易に誰でも検査を受けられるようになることで、
患者の悩みを深くすることがないように願っています。
当院では、習慣性流産、着床不全等でお悩みの方のご相談を
承っております。
いつでもご相談くださいね。
 ⇒ info@rumishinkyuu.com

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