海外での代理出産のリスクとは?

先日話題になったタイでの代理出産のニュースのことは
すでにご存知かと思います。
双子の運命の分かれ道、あからさまな障害者差別か、と
センセーショナルな取り上げられ方をしましたが、
実はこれは氷山の一角なのかもしれないです。
同様なことはこれまでも起こっていたのかもしれません。


その後、同じくタイで日本人男性の部屋に「代理出産に協力した」
とする9人の乳幼児がみつかって、犯罪性がないか捜査されるという
ニュースもありました。
急に表に出てきたタイの代理出産事情。
国際的な代理母出産のあり方に一石を投じる事件ですね。
この機会に、そのリスクについて考えてみたいと思います。
オーストラリア人夫婦の依頼でタイ人女性が代理出産をしましたが、
双子のうち1人の男児がダウン症であったため、
依頼主が引き取りを拒否し、健常児の女児のみを引き取ったとのこと。
障害のある男児はタイ人女性が引き取って育てているそうです。
この女性が見ず知らずのオールトラリア人からの依頼で、報酬を得て
代理出産を引き受けた背景には借金があり、若くしてすでに2人の子どもがいて
リスクを冒してでも150万円相当という報酬が必要だったということです。
その後男の子の心臓の手術のために、依頼主のいるオーストラリア中心に
募金が集まっているとのことです。
再度検査したところ、心疾患は無かったというニュースもありましたし、
何が真実なのか、もうわけがわかりません。
ただ、明らかなのは、この代理母は双胎というハイリスクの妊娠期間を経て
出産していることです。
ただでさえ妊娠出産は最後まで何が起こるかわからず、危険もあり得ます。
他人の受精卵での、双子の出産。
最先端の医療の用意があったとしても、その危険を冒すことには変わりません。
胎児がダウン症であること判明し、7か月の時点で仲介業者から
中絶を求められたと。
まさに、障害があると「生まれてきてはいけない」というメッセージです。
日本では中絶が可能なのは21週までと法的に決められています。
それをはるかに超える週数で中絶を迫るという・・・
代理母が拒否して中絶しなかったとはいえ、
出生後、ダウン症という障害があるために放棄ということは
引き取った女児に万が一、後に障害がみつかったとしたら
その子も遺棄するということでしょうか?
衝撃的です。
自分自身も含めて、完璧な人間なんていないはずです。
なぜ子どもにだけそれを求めることができるのでしょうか。
男児は、障害があるとはいえ、将来自分の生い立ち、ルーツを
どう受け止めるでしょうか。
母親やきょうだいと肌の色が違うこと、「引き取られなかった子」と
呼ばれることを、どう感じるでしょうか。
女児も、ふたごのきょうだいがいるが、両親が引き取り拒否したため
タイで暮らしていると知ったしたら、どんな思いをするでしょうか。
高額の不妊治療が受けられることからして、オーストラリアでの
依頼主の暮らしは、タイで代理出産した母の暮らしと比べると
かなりの差があるのは明らかです。
きょうだいながら育つ環境は大違いです。
男児の心疾患は手術等が必要な場合、満足な治療が受けられるでしょうか。
(ダウン症児に高確率で心疾患が見られます)
将来に渡って、健康的な生活を送れるのでしょうか。
募金が集まっているようですが、障害のある彼が生涯守られて
いけるでしょうか。
子どもたちの権利は?!
子どもたちの幸せは?!
子どもの立場をまったく無視したオトナの身勝手な行動に
憤りを感じます。
金銭の取引が介在するビジネスだから尚更です。
タイでは、多くの日本人夫婦が利用する仲介業者が存在し、
高級ホテルのような病院で生殖医療サービスを受けることが
可能だそうです。
法規制があっても野放し状態だそうですから、
中には怪しい仲介業者もあるでしょうし、
実際何が行われているのかは、わかりません。
おそらく、水面下で起こっていることのなかには恐ろしいことも
あるのではないでしょうか?
その典型が、人身売買の疑いのかかっている9人の乳幼児の件ですね。
国をまたがる代理母出産に関する国際的な規制や法の整備(と徹底)を
急ぐことも大事ですが、
根底に国の経済格差があるため、どうしてもお金があるほうに
都合の良い制度になってしまう恐れがあります。
上記のタイ人女性のように、借金があるため、経済的困窮のため、
身体を張って(リスクを背負って)代理母になることを選択することが
人道上どうなのか? という議論がまだ十分なされていないのです。
そして、生まれてくる子ども本人の基本的人権や福祉が
考慮されることなく物事が進んでいくのです。
これは大きな問題だと思います。
まだ表に出てきていない、未知の問題も今後出てくる可能性は
大いにありますよね。
双子のきょうだいの運命は今後どうなっていくのでしょうか。
依頼主と代理母側、双方の意見が対立しているようです。
間に挟まれた子どもたちが気の毒でたまりません。
長年不妊治療を続けてこられた結果や、先天的に子宮を持たない方にとって、
唯一とは言いませんが、代理母出産は残された数少ない選択肢の1つです。
養子という方法があるのですが、日本は血縁を重要視するお国柄ですので、
まったく血のつながらない養子は敬遠されがちなのです。
特別養子縁組の制度もなかなか厳しい条件ですし。
もっと柔軟になれないものでしょうか。
これから代理母出産を検討されるご夫婦もいらっしゃることでしょう。
どうか、さまざまなリスクや問題があることを認識して
じっくり考えていただきたいのです。
オーストラリアも謝礼を支払う代理母出産を認めていないため
海外に可能性を求めていった結果、アメリカなどより費用が安い
アジアの国々で代理出産ビジネスが開拓されていきました。
すでにたくさん日本人も同じ目的でタイやインドに渡航していることが
わかっています。
最近ではマレーシアも増えているそうです。
物価が安いから、と安易に考えないほうがいいかと思います。
150万円は日本ではそれほど大金ではないかもしれません。
日本円と他のアジアの国々の通貨の間には大きな隔たりがあるのは
事実です。
タイであれば、それは平均年収よりも多い金額です。
おそらく、年齢も若くて技術や資格がない女性であれば
到底稼ぐことができない大金でしょう。
他に選択肢がなくて選んでいるのです。
切羽詰った事情があれば、もっと安い報酬でも引き受ける女性は
たくさん存在します。
そうなれば、もっと劣悪な環境で医療にかかる可能性もあります。
貧しくても、そこに暮らす人々は、私たちと同じ人間です。
痛みや感情を持った人間であり、
妊娠出産で命を落とすこともあり得る女性なのです。
海外での代理出産のリスクとは、代理母となる女性や、
生まれてくる子どもたちのリスクなのです。
そのことをどうか忘れないでくださいね。
心からのお願いです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA