家族って何ですか?

近年、不妊で悩むカップルは6組に1組と言われるほど
増加傾向が続いています。
「なんとしてでも我が子をこの胸に抱きたい」
我が子とは、遺伝上のことでしょうか、それとも…?
子どもを中心とした”家族”の形が変化しています。


少しずつ変化は見られるものの、日本では昔から「血縁」の意識が強く
血のつながった子どもにこだわる傾向はあるようです。
現代の若いご夫婦でも、夫と妻の血を引いた、二人の子どもで
なければならないという意識は、海外に比べて比較的強いです。
“血”という意識よりは”遺伝子”という感覚でしょうか。
これは生育過程のどこで定着するものなのかわかりませんが、
価値観として強く持っている方々が多いですね。
[希望~こだわり~あたりまえ]のグラデーションはあります。
日本が不妊治療大国と呼ばれ、体外受精の実施件数が非常に多いのは
そんな背景もあるように感じます。
現在では27人に1人が体外受精で生まれた子どもです。
そうした価値観のもと不妊治療に挑戦し、顕微授精まで進んでも
結果が出ず、最終的に子どもを諦めるカップルもあります。
ですがなかには挫折感を乗り越え、非配偶者間人工授精によって
父親は血のつながらない子どもを授かるご夫婦もあります。
また最近では海外で卵子提供を受けて妊娠出産される方もあり、
こちらは母親とは生物学的には血がつながらない親子です。
どちらも夫婦の子として産み育てていく過程で
“家族”としてのつながりを深めていくことが可能なのです。
何か月もの妊娠期間、そして出産という経験を積んで、
「この子は我が子」という意識はより強くなるようです。
まったく不明の提供者よりは少しでも近しい親族で
精子や卵子を提供してもらい、妊娠に至る例もあります。
こうして授かった命の背景としてはそれぞれ事情があるのですが、
子ども本人が成長してからの、自身の出自を知る権利はどうなのか、
告知するべきかどうなのかも含め、まだまだ議論は尽くされて
いないようです。
どうしても”我が子”を見る「親」目線から離れられず、
子ども自身の目線が充分考慮されない傾向があります。
子どもも一人の人格。
ひとり一人違った個性をもつ存在です。
その子にとっての最良とは何なのか。
そうした視点も忘れるべきではないはずですね。
血のつながった子ではありませんが、
特別養子縁組で新しい家族を迎えるカップルもあります。
一通りの不妊治療も経て、この制度を選択するまでには
さまざまな葛藤や努力があるはずです。
年間で、不妊治療を受けるカップルは30万組。
いっぽう、乳児院で預けられた子どもは約300人、
児童養護施設には約2万8000人が暮らすそうです。
制度の在り方(条件が厳しい)と”血”のハードル、
両方がこの数字に表れているようです。
いま、私たちは新しい”家族”の形を模索している最中かもしれません。
社会は同性婚が認められる方向に進んでいます。
多様性を認めるのか、拒否してこれまでの価値観を守るのかが
問われていると思います。
不妊治療の原点は「子どもを授かって、家族で幸せに暮らしたい」
だったはずです。
それが「子どもを産むことが唯一の幸せ」にすり替わっていませんか?
血のつながった子どもを産むことだけが幸せなのであれば
それが不可能な人は全員不幸だと言えるでしょうか。
ご夫婦二人の暮らしを選択される家族もいます。
血縁関係の無い子どもを育てる家族もいます。
そんな方々のことを知り、理解を深めていただければと
思っています。
なぜ”家族”を求めるのか。
何をもって”家族”となるのか。
幸せになる選択肢はたくさんあります。
どの道も、幸せな人生につながっているのですよ。
誰もが幸せに生きることができる社会とは?
不妊治療は多くの疑問を投げかけてくれています。
参考)『揺れる命 新しい家族の形』(読売新聞・会員限定記事)
1)わが子は特別養子縁組
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117739
2)体外受精 姉が卵子提供
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117794
3)遺伝上の父を知る権利
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117812 
4)「血縁よりずっと強い絆」
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117882
5)「産みたい」転じ「育てたい」
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117883
6)「血縁重視 進まない縁組」
  http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/login.jsp?url=%2Fpage.jsp%3Fid%3D117963
  

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